再び、ハーレクインの、つまりエロ小說の世界に戾つてみて分つたのは、私が求めてゐたのはこれだといふ事、世間がポルノと言渡すかもしれないこれの事だつた。私はとびきりセックスの事しか頭に無く、難しい哲學、オチ、敎訓など、もつてのほか、どうでも良かつた。スパイ小說ならセックスシーンを見るし、ハードボイルドならやつぱりセックスシーンを見る。純文學でもだ。なんだつてセックスが好きだつた。だからセックスを書かう! セックスに到る病理を書かう! ……書いても良いのだと、私は又自分の手に刻んだのだつた。
普段からセックスの事ばかり考へてゐるけれど、それで良いのだ、と敎へてくれたのは書く事だつた。