窗が氣になつて仕方が無い
殘量を確認するまど
こんなにもかすれがちで
いや 私の聲がとだえるのか
分らない
萬年筆がそつぽを向くと
書かれない
私はイライラしながら
字をなぞる
別に殘さないのに
字をなぞる
ただその跡を見たいから
讀返さなくてもいい
そのぼんやりした
軌跡を見て
自己滿足に浸るのだ
又私は
インクの吸上げが好きで
まどばかり眺めてゐる
まるで雨でも降らないかなといふやうに
私のまど
私のまどは どこだらう
創造といふ名の
インクに浸して
生返るとき
私の聲は枯れてゐますか
私といふ道具は
本分を果してゐますか
私のペン先は
書ける方向を向いてゐますか
狂ひさうです
總てが水泡に歸すやうで
總てが
認められてゐないやうで
それこそ
見返り
有料の願ひでせうか
私は足跡をつけたい
永遠にのこる
足跡……
無下な望みでせうか
私は
ここにゐます
ここにゐます
ここにゐます
狂ひさうだ
どうか憶えておいて
死ぬまでと言はず
ずつと