小龍としての晩餐:隣人

自然の豐かな國に、十二の王樣がゐました
王樣たちは、神に見守られながら、仲良く國を十二等分しました
が、そのうちに領土の擴大がしたくなりました
戰爭の始まりです
神樣は再三彼らに忠吿しました
七つの王は鬪ひをやめました
殘りの五つの王は、神の仲裁を脇にやつて、より大きくて扇情的な鬪ひに臨みました
そして五つの王は、つひに神の制止を受けました

巨きな海を領土に持つ王は、子供を受持つ鞘を切り落とされました
以降、彼は誰かを受容れるしかありません
隣の巨きな森の領土を持つ王――の子孫とわちやわちやしながら、時々使者を送つては、土產物を詮索します

退屈な、退屈過ぎて傳記を書くことも忘れた森の領主――彼はこの森から出ることを許されない――は、ある日、隣の海の領土から、客人を迎へました
お客は、豪雨で氾濫した川の水を渡つてきたと言ひました
それは大變でしたでせうな
いやはや、あの泥水には參りました
客は、おなかの皮から、大きな大きな酒甁を持ち出しました

海の酒 海の酒
ご主人樣からお土產です
領主が覗いてあらびくり
これは泥水ではないか!
いやはや これはかういふものでして
なかなかの味なのですよ
さあ領主樣 お試しあれ
ごくりと喉を鳴らす 領主樣
まさか受取らないとは言ひますまい
泥の如く淀んだまなこ
甁の口を持つて とろりとそれを 流し込む
お客はにやりと笑つて――
領主樣、お粗末さまでした
これにて謁見、終了
びれがかたかた搖れてゐる
窓がたかたか叩かれる
雨なんて嫌ひだ!
領主がひとり言ちるのであつた